スペシャルインタビュー vol.05 中村大作さん

このコーナーでは、レジェンド財団の理事である松山真之助が、素敵な方たちにインタビューします。

インタビュー第5弾は、社会起業大学学長の中村大作さんをお尋ねしました。2009年の立ち上げ時から社会起業家育成に全力投球している中村さんにその熱い思いを伺いました。

誰もが社会起業家になる時代社会を創る! ~社会貢献難民を救う

~社会起業家とは?~

松山 :
まず初めに、社会起業大学とはどういうところか、教えていただけますか?
中村 :
はい、ひとことで説明しますと、「社会起業大学は、社会起業家を育成するビジネススクール」です。(社会起業大学:http://socialvalue.jp/)入学式からソーシャルビジネスグランプリ(卒業式)までの4カ月に間に、社会貢献への意識とビジネスマインドをより豊かなものに変えます。今年で3年目になり、すでに6期開催で250名の社会起業家の育成に携わらせて頂いております。卒業記念として行われるソーシャルビジネスグランプリでは、毎回、心に響く素晴らしいプレゼンが行われています。
松山 :
なるほど。ところで、社会起業家とはどういう人のことですか?
中村 :
社会起業家とは、企業が利益になりにくいと判断して目を向けないエリアや、行政や国も対応しきれない問題を、ビジネスの手法を用いて解決する人のことです。
たとえば、ホームレス問題など、なかなかビジネスにならないので民間企業が事業の対象にしにくいエリアがあります。行政や国での対応もありますが、十分ではありません。そこにいるのは、社会的弱者(社会学では社会的排除者ともいわれる)で、彼らの問題を解決しようとしていきたのがNPOの人たちです。ところが、NPOの活動はなかなか資金が回りにくいのが現状で、助成金や補助金にたよるとか身銭を切るとなどでしか、活動を維持できませんでした。
そこで、ビジネス的な手法を使って、持続可能な活動にしていこうという動きが盛んになってきました。その人たちを社会起業家とよんでいるのです。つまり事業性や収益性を確保しつつ社会の問題を解決しようとする人達のことです。
松山 :
なるほど、行政サービスが提供するサービスと、企業などのビジネス活動の間に落ちてしまった社会的弱者を救う活動をする人たちを社会起業家というわけですね。
中村 :
はい、確かに教科書的にはそういう整理もできるのですが、では、一方の一般企業は営利を貪る事業だけかというとそうでもないと思うんですね。
松山 :
といいますと?
中村 :
一般企業もその事業の意味や価値を掘り下げていくと、どこかで社会の役にたっているわけで、広くとらえれば、どんな仕事も社会起業家としての活動になるのですね。
松山 :
なるほど。
中村 :
よく電車には優先座席というのが設置されています。でも、そういう指定があるからお年寄りや体の不自由な方に席をゆずるのではなく、どの席であっても譲るべきですよね。
松山 :
確かに!
中村 :
横浜では、電車の座席ぜんぶに優先座席という名前を付けたそうです。笑
松山 :
それは面白い取り組みですね。
中村 :
同じように、社会起業家、あるいはソーシャルアントレプレナーという呼び方も、考えてみれば優先座席と同じように、すべての企業や事業がソーシャルなものなら、わざわざ「社会起業家」と呼ばなくてもいいのではないか・・・という考えもします。ただ、最近はこういうソーシャルな動きがひとつのブームでもあり、それはそれで意味があるのではないかと思うのです。
かつて、ベンチャー企業というとひとつのイメージが出来上がったように、(今は悪い意味でのイメージになってしまいましたが、笑)、やがて、社会起業家という言葉も、その持つ意味がひとつの文化として世の中に浸透すればよいと思います。
松山 :
優先座席と社会起業家。面白い対比ですね。

~今の活動を始めることになったきっかけは?~

松山 :
この社会起業大学を始めることになったいきさつをお聞かせ下さい。
中村 :
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2009年に週刊ダイヤモンドで「社会起業家特集」がありました。ある方にそれを紹介されて、深い共感を覚えました。同時に、様々なところで、同じようなことを考えている人がいるのなら、一緒に力を合わせて成長していく場も必要になるのではないかと思ったのです。そこで、社会起業家を育成する機関、現在の社会起業大学ですが、その構想と企画を考えました。
それまでは、フィジーで地域起こしの教育事業を行ってきていたのですが、その経験もおおいに役立ちました。
松山 :
そうでしたか。ところで、田坂広志さんが名誉学長をされていますね。
中村 :
はい、ほんとにありがたいことなのですが、不思議な出会いとご縁によって、名誉学長をお願いすることになりました。
松山 :
田坂さんとはどんな出会いだったのですか?
中村 :
以前から田坂さんの本を読み、ずっと尊敬しておりました。20代に読んだ「仕事の報酬」は、本の内容をすべてタイプして、読書会などで配布したこともあります。
2009年に社会起業大学を立ち上げているときに、たまたま田坂先生の講演会に参加できる機会があり、ご挨拶の後、社会起業大学の事業についても少しご紹介させていただきました。それから約一年間、社会起業大学を立ち上げていく過程と進捗を、田坂さんにずっと報告し続けておりました。
松山 :
わ~、それは凄いですね。
中村 :
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そして2010年の終わりに、田坂さんのほうから「そろそろ一緒に活動しませんか?」とお声掛けをいただいたのです! 感激でした。そして、思い切って名誉学長をお願いすることになりました。
松山 :
素敵なプロセスがあったのですね。田坂さんの名誉学長就任の記念講演に、私も参加させていただきましたが、あのときの講演は、魂が震えるようなほんとに深いメッセージがありましたね。
中村 :
実は、あの名誉学長就任記念講演の日程もすごいことだったのです。
2011年3月23日でした。そうです、あの3.11のわずか10日ほど後の日程です。時が時だけに、延期の可能性もあったのですが、田坂さんにご相談したところ「やりましょう!」とのお返事がありました。「こんなときだからこそ意味がある。日本人の原体験になるでしょう」と。講演でもお話されましたが、「2万人の方の命を賭して、私たちは何かを問われている。いつか、語ろう。あの時の体験が私たちの働く力や意義を与えてくれたと・・」という言葉には涙がこぼれました。
松山 :
同感です。私も会場で泣いておりました。
中村 :
田坂さんが名誉学長に就任いただいたことで、私たちもますますがんばらなくてはと思っています。

~今後の社会起業大学は?~

松山 :
今度の社会起業大学は、どのような展開になるのでしょうか。
中村 :
はい、「社会起業」という言葉の意味や働き方が、もはや当たり前のような社会がくることが夢ですが、そのために3つの活動を進めています。
1つめは、個人が「働き方・生き方」を実感していただけるような学びの場、つまり社会起業家の育成する活動です。事業として成立していかなくてはならないので、たくさんの方に受講していただく必要があります。ただし、ここで学ぶ人を必死に「集める」のではなく、「集まる」活動にしていきたいと思います。
2つめは、「企業内研修」です。会社のリソースを活用して行う社会貢献事業、その担い手をソーシャルイントラプレナー(社内社会起業家)などとも言われていますが、そういう活動の支援をしています。企業内での事業開発の研修やビジネスコンテストをお手伝いしています。
3つめは、「学校でのキャリア教育支援活動」です。中学・高校生むけに、働く意味や職業意識を実感してもらう講演活動をしています。生徒さんだけでなく、PTAの皆さんも参加していただき、1,000人規模での講演もありました。これからも、こうした活動を大切にしていきたいと思います。
松山 :
企業や学校でも活動されていらっしゃるのですね。今度、私の地元の中学でもぜひご講演をお願いします。
中村 :
はい、喜んで。

~社会貢献難民を救う?~

松山 :
最後に、社会起業大学が生み出そうとされている社会の変化を、ワールドシフト的に、表現するとどのような感じになるでしょうか?
中村 :
AからBへのシフトという感じですね。
うーん、そうですね。
こんな感じでしょうか(右図)。
従来は、社会貢献しているという
実感が得にくい働き方の社会でしたが、
それを、誰もが社会起業家として働く幸せ、
社会貢献の実感できる生き方・働き方
の時代にシフトさせたいですね。
これは、別の言葉で表現すると
「社会貢献難民の時代」から
「誰もが社会起業家の時代」へのシフトと言えるでしょうか。
いわば、生き方・働き方シフトですね。
このシフトで大切なことは、自分らしさを生かしながら、社会貢献を実感するというところです。逆にいえば、社会貢献をするなかで、自分らしさを見つけていくプロセスでもあります。
松山 :
中村さん、今日は素敵なお話をありがとうございました。
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中村大作氏 プロフィール

社会起業大学学長
社会起業家フォーラムパートナー

東京生まれ。東京電機大学理工学部卒業、法政大学大学院経営学研究科卒業(MBA)。大学卒業後は建設会社を経て、海外留学のコンサルタント会社に入社。年間渡航者1万人以上をサポートする。2006年からはフィジー専門の留学会社の取締役として草創期を支える。廃校を利用した地域再生モデルで留学事業を行い、フィジー政府の全面的な支援を受けて、3年間で売上10倍の成長を遂げると同時に、フィジーの地域活性化に貢献する。2010年4月には社会貢献に繋がる社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)を育成する社会起業大学の設立と共に学長に就任。ソーシャルビジネスを育てる起業家の教育に尽力する。著書:『迷い続ける25歳の退職届』(ブックコム刊)

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