スペシャルインタビュー vol.02 鵜尾雅隆さん

このコーナーでは、レジェンド財団の理事である松山真之助が、素敵な方たちにインタビューします。

さて今日は、インタビュー第二弾として、ファンドレックス(FUNDREX)代表/日本ファンドレイジング協会常務理事の鵜尾雅隆(うおまさたか)さんにお話を伺います。日本での寄付額を、現在の1兆円から10兆円にするというビジョンを掲げ、画期的な取り組みをされています。

10年後、社会の血流を変える!~1兆円から10兆円へ

~日本のソーシャルマネーの流れを変える!~

松山 :
まず初めに、鵜尾さんの活動についてご紹介いただけますか?
鵜尾 :
一言でいえば、ソーシャルなお金の流れを変えようとしています。そのために3年ほどまえ(2008年)にファンドレックスという会社を作り、そして2年前(2009年)に日本ファンドレイジング協会(jfra)というNPOを立ち上げました。
● Fundrex : http://www.fundrex.co.jp/
● jfra : http://jfra.jp/
ファンドレックスは、NPOや公益法人の皆様に対するファンドレイジング(資金調達)支援を専門とするコンサルティング会社です。新しい資金循環や資金調達の流れを生み出す支援をしたいと考えています。
また、日本ファンドレイジング協会は、日本の寄付文化を変えようと設立しました。民間非営利団体への寄付という行為が高く評価され、寄付する人もされた人も幸せと満足を感じられる社会にしたいと思っています。
松山 :
どのような背景でこれらの活動を始められたのですか?
鵜尾 :
まず、日本の社会は、これまで行政に依存し過ぎたきらいがありました。給付金、補助金など様々な仕組みを行政がつくり、個人も企業もそれに依存する構図がありました。そんな中で阪神淡路の震災がおき、ボランティア活動が注目されました。そして、NPO法の改正とともに多くのNPOやNGOが生まれてきました。そして10数年を経て、そのNPOの活動も具体的に実績(肉)ができたのです。ところが、それらの肉に血が流れていないのです。つまり、活動のための資金(血液)が不足し、十分なひろがりをもった活動ができていないということです。
そこで、従来とは異なるソーシャルなお金の流れを生み出そうという活動を始めました。
つまり官→民ではなく、民→民というお金の流れですね。いよいよ、この課題に誰かが真正面から取り組まないといけない時代になってきたと思うのです。
松山 :
確かにNPO、NGOで資金不足で十分活動ができないところも多いですね。
鵜尾 :
はい。そこには、3つの軸の課題があると考えるようになりました。
松山 :
3つの軸ですか・・・。
鵜尾 :
ええ、1つ目は、税制などの仕組みを変える「政策の軸」です。日本は世界でもっとも厳しい税制の国だったので、民から民へのお金の流れが難しい環境にあるんですね。
2つ目の軸は、「ソーシャルなお金の市場化」です。日本にはソーシャルなお金のマーケットがないため、寄付などの資金が回りにくいんです。マーケットがあればお金が流れやすくなり、それが可視化されれば、ソーシャルマネーの流動性はさらによくなります。
3つ目は、NPOなどの「資金集めのスキルアップ」です。ファンドレイジングスキルですね。現在、多くのNPOなどの団体は、資金集めに苦労しているところが多いのです。
松山 :
これらの3つの軸の変革が、ソーシャルなお金の流動性を高めるのですね。ところで、現在、寄付などのソーシャルなマネーはどのくらいの動きがあるのですか?
鵜尾 :
現在、個人ベースの寄付が約5000億円、企業ベースも同じく5000億円くらいで、合わせると1兆円規模です。これを10年後の2010年の10兆円規模にしたいのです。
松山 :
壮大な計画ですね。
鵜尾 :
それから、3軸の課題のゆえに結果として日本で起きていることが二つあります。それは、「きっかけ」と「成功体験」が少ないということです。
まず、「きっかけ」ですが、日本では寄付のきかっけが非常に少ないですね。たとえば年末年始の神社などへの寄付や、10月1日の赤い羽根募金などが、日本では恒例の寄付の機会ですが、回数としては非常に少ないですね。一方で欧米、とくにキリスト教圏では、毎週のように教会にお祈りにいき、そこで寄付、何かのイベントがあればまたそこで寄付・・という具合に寄付のきっかけが非常に多いのです。これは宗教観の違いではなく、単なる機会や習慣の違いですね。
松山 :
確かに欧米と日本は、きっかけという点で違いがありますね。もう一つの「成功体験」というのは・・・
鵜尾 :
欧米は、理念で動く社会です。つまり、議論を重ね、これこれの理念と方針で行こうと合意されれば、それにむかって社会が動き出すような世界です。一方、日本では、むしろ理念より実体験がものをいいます。そこで、日本で寄付文化をもっと広げるためには、「寄付してよかったな~、支援してよかったな~」という成功体験がもっともっと必要なのです。
松山 :
「きっかけ」と「成功体験」、確かに日本では不足していますね。具体的にはどのような活動をされているんですか?
鵜尾 :
はい、たとえば、ファンドレイジング日本では、年に一度、ファンドレイジングのノウハウやツール、成功事例などを発表するイベントを開催しています。今年、2年目となる「ファンドレイジングジャパン2011」では、500人を超す人々が集まり、全24のセッションを通じて、ファンドレイジングのノウハウや成功事例を共有することができました。
それから、2月からは認定ファンドレーザー資格制度も開始します。これも可視化に役立つと思います。
また、日本初となる「寄付白書」も発行しました。これはマーケットの可視化に貢献しています。学者の人もこれをもとに論文を書けますし、メディアの方にも重宝され、記事を書きやすくなったと言われています。いままでは、情報を捜すだけでも大変だったのが、寄付白書によれば・・といえば大丈夫になりましたから。(笑)
こうした活動を通じて、税金、ビジネス、ソーシャルの軸で 日本がよくなるといいなと思っています。

~今の活動を始めることになったきっかけは?~

松山 :
そもそも鵜尾さんがこの世界に足を踏み入れたきっかけは何ですか?
鵜尾 :
photo
はい、もともと私は 国際協力(ODA)の世界にいました。JICAという政府系の団体におりまして、40カ国以上に行き、様々な状況を見てきました。働き始めた当時、日本のJICA予算が2000億円弱、NGOは一番大きい団体でも2億円規模でした。官民の規模は1000:1くらいの比率ですが、まーそんなものかと思いました。しかし一方で、アメリカのケアインターナショナルの予算は800億円もあったのです。
これは何かあるなと思いました。つまり、行政にも匹敵するような活動をしている団体がいるということは、官民の間でいい意味での緊張感が生まれるのです。たとえば、このプロジェクトはNGOに任せるから・・となれば、行政としてはうかうかしていられなくなるわけです。
日本ではどうしてそうした状況がないのか、と思ったのが24歳の時。以来、ライフワーク的に、ソーシャルなお金の流れを活性化させることに関わってきています。
その後、政策の問題、ソーシャルマネーの市場、ファンドレイジングスキルなど3階層の問題があると気付いたんですが、それをやる人がいない。結局、自分でやるしかないと会社や協会を立ち上げたということなんです。
松山 :
スケールが大きいですね。日本全体を変えていくことになりますね。

~共感型ソーシャルマネーの社会~

鵜尾 :
社会では血流(お金の流れ)が変わると社会の空気がかわると思うのです。
行政に依存しすぎた日本のお金の流れを変えるときっと面白いことが起きる。新しいチャレンジをする人に応援が集まり資金が集まるようになりますね。
そういう意味では、鶴岡さんがやっているレジェンドホテルの共感型出資の動きは、素晴らしいですね。今までは担保や、企業の大きさをベースに資金が集まりましたが、それが共感ベースになっているというのはすごいことです。共感型寄付(NPO・NGO)と共感型出資(レジェンドホテル)は、根底は同じですね。共感は最大のモチベーションで、共感をベースにしてお金が流れるというのは、とても面白い社会だと思うのですね。鶴岡さんがよくおっしゃるB-F(ファン)の流れも大きな変化ですね。この延長戦上に日本社会の変化があり、そういう活動を後押しする共感型ソーシャルマネーの社会を作りたいというのが私の立ち位置です。ともにがんばって日本の社会を変えていきましょう。
松山 :
はい、ぜひとも!

~夢は最大の経営資源~

松山 :
最後に、鵜尾さんがなさろうとされている社会の変化を、ワールドシフト的に、表現するとどのような感じになるでしょうか?
鵜尾 :
AからBへのシフトという感じですね。
うーん、そうですね。
こんな感じでしょうか(右図)。
これまでは、いくら儲かるのかという
お金自体が幅をきかせるような
資本主義だったと思いますが、
これからは「共感」や「感動」が
行動のエネルギーになるような時代に
なると思います。
つまり、「キャピタル資本主義の時代」から「共感資本主義の時代」への変化ですね。
世の中が大きく変わることになると思います。
そのためには、先ほど述べたような3軸の変化や、寄付してよかったな~という成功体験やチャリティのきっかけを増やすことが必要ですね。
松山 :
素晴らしいシフトですね。ぜひ、実現にむけて活動を続けていきたいですね。
鵜尾さん、きょうは素敵なお話をありがとうございました。
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